2009年12月16日

白熊

僕はオオタク。白熊だ。ほんの2日前母親から離れた。弟と2匹で、この大自然に飛び出したんだ。



今まで見てきた風景もいつもと違う。



この過酷な氷の世界で生きて行かなくてはならない。



しかし僕らは何処に行くにも自由だ。何にも縛られることはない。地球上で最も自由だ。


たった白熊2匹にとってはこの世界は広すぎる。この永遠とも思われる大地で僕らは何処まで行けるのか?



たった2匹の旅は始まった。


とりあえず僕らは歩いた。別に目指す所はない。あての無い旅だ。



どうにも僕らの住むこの世界は地面が薄い。



100kgをも越える僕らの体は、たまに薄い地面を突き破り冷たい海へと落ちる。だが僕らの好奇心は寒さに勝り突き動かす。




まだ見ぬ新しい大地へ僕らは歩いた。



腹が空けば魚を取った。



苦手な漁だ。この極寒の地では他の生き物と出会うのはまれだ。




漁だって楽じゃない。冷たい海の中で魚をとるのは至難の技だ。




僕らは常に空腹だった。この大きな体はやたらと腹が減る。




だが僕らはひたすら歩いた。あてはないが、歩くことが唯一の生への実感だった。




たまにいる大きなアザラシを弟と分け合って旅をしていた。




だが次第に弟との距離が開いてきた。一緒に遊ぶことも無くなってきた。




あいつはほとんど喋らないし何を考えているのか分らない。



僕らは別々の道を行くことにした。




一匹の旅は孤独だ。毎日することは餌を探すことか、寝ることばかりだ。他の白熊を見ることはあまりない。真っ白な世界に真っ白な自分がいるだけの世界だ。





久しぶりに弟に会った。アザラシの牙が刺さって死んでいた。僕は弟が仕留めたであろうアザラシを全部食べた。こんなにお腹いっぱいになったのは初めてのことだった。






なぜ僕は歩いているのだろう?この先に何があるのだろう?死んだ弟はどこに行くのだろう?答えが出るわけではないが、今日も僕はこの白い大地を歩き続ける。




おわり



Posted by オオタク(悪) at 11:16│Comments(0)白熊
 
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