ロングおじいさんが去って行った夜。マイケルは考えていた。というか昔からここの暮らしは窮屈と感じていた。
何でみんな何も疑問に思わないのか?ここから出たいと思わないのか?あんなおじいさんになって出たとしてもその先には何があるのか?
いろいろ考えていると全然眠れない。マイケルはロングおじいさんの部屋に行ってみた。
部屋の主がいなくなった部屋はとても広く感じられた。その部屋はロングさんがいないせいか変な匂いがしていた。マイケルがこれまで嗅いだ事のない匂いだ。なぜかその匂いを嗅ぐと心が落ち着いた。ロングさんはもうここにはいない。そう心の中で整理をつけ、マイケルは部屋に戻って行った。
次の日マイケルとユニは一生懸命働いていた。そう、この日はシチューの日なのだ。
何の楽しみもないここでは食べ物が唯一の娯楽といってもいいだろう。
朝から一生懸命働いているところを見せると、いつもコックさんはシチューを多めに入れてくれた。
汗だくになりながらマイケルとユニは食堂に向かった。
今日のシチューもおいしそうだ。
マイケルは一口食べた。
旨い!!
一週間まずい飯ばかり食べているので、このシチューは格別においしく感じた。
マイケルが『うまい!うまい!』と言いながら食べているとユニが言った。
『おいおい!どうしたんだマイケル泣くほど美味しいのか?』
マイケルは自分が泣いているのを知った。確かに泣いている。汗だくで分らなかったが目は涙で溢れていた。
ユニは気にせず自分のシチューを食べていた。その後マイケルに元気がなかったが、ユニは特に気にすることはなかった。
その翌日ユニが目覚めるとマイケルの姿はなかった。
ベッドにはユニ宛の手紙があった。
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ユニへ
おれはここから出ていくことにする。突然でごめんな。相談しようと思ったけど、反対されそうで離せなかった。でもどうしても確かめたいことがあるんだ。
外に出たらロングおじいさんの所に行こうと思う。
何年でもお前を待っているから。そこから出たらどんな形でもいい連絡してくれよ。
お前の幸運を祈っている。
マイケル
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ユニは少しだけ涙が出た。それと同時に怒りが湧いてきた。でもこの怒りもぶつけるところがないので次第に冷静になっていった。
マイケルはどこから出て行ったのか?当然のようにここから出るにはとても大変なことだ。
うんうん考えているとベルが鳴った。作業開始のベルだ。
ユニは急いで着替え作業場に向かった。
毎日ように名前が呼ばれる。
ユニは返事をしたが、同室のマイケルのことを聞かれたらどうしよう…と悩んでいた。だがユニ心配とは裏腹にマイケルの名前が呼ばれることはなかった。
ユニは一生懸命働いた。マイケルがいない分いつもの2倍働かなくてはならないのだ。
いつもより多く働いているせいか、時間が過ぎるのが早い。もうお昼の時間だ。
一生懸命働いても御飯がまずくてはやる気が出ない。昨日がシチューだっただけにユニはがっかりしていた。
ユニが食道に向かうと、いつもは厨房の奥にいるコックさんがいた。
コックは大きな声で話し始めた。
『毎日作業ご苦労様です。ここには沢山の人がいます。年老いた老人もいれば、まだ10にもならない子供もいる。特に子供にはここの環境はきついものがあるだろう。そこで一生懸命働いている子供に感謝の気持ちをこめて今日もシチューを出そうと思う。実は昨日子ヤギが手に入ったんだ。だが子ヤギなためみんなの分はない。せめて子供だけにでもサービスしようと思う。』
ユニは喜んだ。一生懸命仕事をするといつか自分に幸せは返ってくるのだ。
『マイケルは馬鹿だなぁ。あと一日待っていれば今日もシチューを食べれたのに。』
ユニはそう思っていた。
おわり